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熊野古道物語 第三章

辛く苦しい目に遭いながらも、一生懸命働く照手はいつも護ってくれている観音様へのお祈りを欠かさず、それはそれは熱心に続けておりました。

そんなある夜のこと。
藤沢にある「遊行寺(ゆぎょうじ※1)」の上人という人の夢の中に、閻魔大王の使者が現れたのです。
その使者は、上人に一通の手紙を渡して去って行ってしまいました。

上人が手紙を開いて中を読んでみると

「上野ヶ原に、小栗判官という人物が今にも死にかけている。熊野の温泉にて治療を行えば助かるであろう。お前はその者を助けねばならない。」

そう書き記されておりました。

上人はすぐに弟子を呼んで、上野ヶ原に向かい、そこで「餓鬼阿弥(がきあみ)※2」という恐ろしい姿をした小栗を土車(つちぐるま※3)に乗せて連れ帰りました。

その小栗の胸には閻魔大王によって書かれた札がぶら下がっており、そこにはこう書いてありました。

『この者を熊野の温泉に浸して元の姿に戻せ。』

ぼろぼろの姿で地を這い回る小栗を哀れに思った上人は、閻魔大王の札に言葉を書き添えることにしました。

『この者を熊野の温泉に浸して元の姿に戻せ。この餓鬼阿弥車引くものに、ひと引き千僧供養、ふた引きで万僧供養成るべし。』

そして上人自らこの土車を引いたのです。
それを見た道行く人々も、供養のためと、それを手伝ってくれました。



小栗を乗せた土車は東海道を上って、やがては照手の働くよろず屋の前にさしかかりました。

そこでようやく小栗と照手の感動の再会、となるところなのですが、すっかり変わり果てた姿であったため、あの小栗だと照手は気づくことが出来なかったのです。

(無理もないけれど、悲しいことですね。(;_;)by あすか)

しかし「これも何かの縁」と照手は、よろず屋の主人に頼み込んで五日間の暇を貰い、小栗だとは気づかないまま、その者を救うべく熊野の温泉へと向かうことになったのでした。


◆ 目次 ◆
第一章
第二章
第三章
第四章
最終話

※1 遊行寺(ゆぎょうじ)
遊行第四代呑海上人が、実の兄である地頭俣野五郎景平の援助を受け、廃寺を再建して遊行の引退後の住まいにした「藤沢山清浄光寺」が起こり。
※2 餓鬼阿弥(がきあみ)
目も見えず耳も聞こえず、ものも言うことのできない、その姿が餓鬼に似ているので「餓鬼阿弥」と呼ばれる。
※3 土車(つちぐるま)
土を運ぶための二輪車。
照手は供養の意味を込め、赤い袴を身に着けて巫女の姿となり、手には笹の葉を持ち、一生懸命土車を引いたのです。

かくして照手は、近江の国まではその旅路をともにすることが出来ましたが、やはり五日間では限界がありました。

そんな照手はこう思うのでした。

「この身が二つあったならば、一つをよろず屋に戻して、もう一つの身で餓鬼阿弥を連れて熊野へ行きたい。
しかし現実は、心二つに身は一つ………。」

名残を惜しみつつも、泣く泣く餓鬼阿弥車に別れを告げて、照手はよろず屋に戻ったのです。

そして上人を先頭に、人々はそのまま熊野へと旅立って行ったのでした。
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せっかく出会った小栗と照手は再び別れてしまうことに!
餓鬼阿弥になってしまった小栗の運命は?
そして泣く泣くよろず屋に戻った照手の悲しみは癒えるのでしょうか?
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